2022年4月10日に東京・渋谷ヒカリエにて開催された『キングダム ハーツ』シリーズの20周年記念イベント“KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY EVENT”で電撃的に発表された『キングダム ハーツIV』と『キングダム ハーツ ミッシングリンク』。本稿ではシリーズディレクターの野村哲也氏の緊急インタビューをお届け。
野村哲也氏(のむら てつや)
本作ではクリエイティブプロデューサーを担当。
『FF』シリーズは『FFIV』でデバッグ、『FFV』でキャラクターやモンスターデザインなどを担当。『FFVII』ではメインキャラクターデザインにとどまらず、物語やバトルなどのアイデア出しも行うように。その後も『FFVIII』、『FFX』、『FFX-2』、『FFXIII』などにメインスタッフとして携わる。『キングダム ハーツ』シリーズではディレクターも担当。『FF』や『KH』シリーズ以外にも、さまざまなタイトルを手掛けている。
会場のメッセージにはある仕掛けが
――『キングダム ハーツ』シリーズ、20周年おめでとうございます。
野村ありがとうございます。
――シリーズの20年を振り返っていかがですか?
野村振り返ると長かったですけど、最近の時間の感覚だとそれほど経ってない感もありますね。
――『キングダム ハーツIII』からもう3年ですしね。
野村そうなんですよね。ただその3年の間には『キングダム ハーツ ユニオンクロス』の完結、『キングダム ハーツIII ReMIND』、『キングダム ハーツ メロディー オブ メモリー』、Nintendo Switchのクラウド版の発売などもあったので、あっと言う間でした。
――20年続くシリーズですが、若いファンの方も多いですね。20周年記念イベントの来場者を見て、あらためてそう感じました。
野村そうですね。『キングダム ハーツ』のファンは比較的若い方も多いように感じます。ディズニーの作品が登場するということで、若い方にも興味を持っていただけるのだと思います。
――会場では貴重な資料などもたくさん展示されていました。ソラのスタチューに野村さんのメッセージが掲げられていましたが、下から3行目に"x"の文字がありました。あれには何か意味が?
野村あれには別のメッセージも隠していて、“x”はそのヒントですね。ご覧になった方々が、SNSなどで考察されていましたが、答えに辿り着いている方はまだいないようでしたね。
――あのメッセージの言い回しや“x”、改行などに少し違和感も覚えたのですが、仕掛けがあったのですね。
野村あのメッセージを考えるのは、とてもたいへんでした(苦笑)。見た通りの文面には20周年のメッセージとして思っていることを伝えたかったですし、謎に気づいてもらえるよう少しだけ不自然にしたり。そのうえで隠されたメッセージを仕込む必要がありましたから。
――あとで自分も解読に挑戦してみます(笑)。
野村かなり難しいですよ? ちなみに、ウチのスタッフはひとりも解けませんでした(笑)。
クァッドラトゥムはどんな世界? トレーラーについて訊く
――『キングダム ハーツIV』のトレーラー映像では発表会場となった渋谷ヒカリエ周辺が忠実に再現されていて驚きました。イベントを渋谷ヒカリエで行うことは決めていたのですか?
野村できれば渋谷ヒカリエでやりたいと思って進めていました。渋谷はランドマークとしてわかりやすい場所ですし、現実世界をゲームで再現するのは、知っている場所のほうがリアリティー感が高まるからです。
――あの渋谷はクァッドラトゥムという世界の一部分、ということでしょうか?
野村はい、そうなります。
――渋谷と言えば、『キングダム ハーツ3D』に登場した『すばらしきこのせかい』のキャラクターとの再会の可能性はありますか?
野村厳密には『すばらしきこのせかい』の渋谷とは別の世界です。ファンの方々のあいだでは『すばらしきこのせかい』や『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』との繋がりを考えられている方もいますが、繋がりはありません。
――ソラが目覚めた部屋も渋谷ですか?
野村あれは位置的には南青山です。
――いい立地!(笑) そこまで設定されているのですね。
野村そうですね、部屋の間取りも指定しています。まだ家具などは指定の物にはなっていないので、内装は変更になると思います。あの部屋はゲーム序盤の拠点になります。
――そもそもクァッドラトゥムとはどんな世界なのですか? 『キングダム ハーツ メロディー オブ メモリー』では“裏側の世界”と表現されていましたが、光の世界、闇の世界、狭間の世界のどれにも属さない新たな世界なのでしょうか?
野村その認識で大丈夫です。
『IV』は立場の違う者の対比みたいなものがテーマ
――トレーラーのナレーションでは「生者の世界ではあるけれど、私たちにとっては“死の世界”」と表現されていましたが、これはどういう意味です?
野村それぞれの立場から見ると、認識が変わるということです。『キングダム ハーツ ユニオン クロス』で、マスター・オブ・マスターがそれっぽいことを言っていたんですが、ソラの視点から見れば、クァッドラトゥムは現実とは違う裏の世界であり、虚構の世界。ですが、クァッドラトゥム側の住人から見れば、クァッドラトゥムの世界が現実で、ソラたちがいた世界のほうが裏側、虚構の世界なんです。今回は、そういった立場の違う者の対比みたいなものがテーマになるかと思います。
――なるほど。あのナレーションはストレリチアで、彼女もソラ側の人間だから“私たちにとっては”と言っているんですね?
野村そうです。
――男性の方のナレーションは、『キングダム ハーツ ミッシングリンク』のナレーションと同じ方だとのことでしたが?
野村はい、キャラクターは同一人物なのですが、同じ方に演じ分けていただいています。これまで出て来ているキャラクターですが、声がつくのは初めてになります。
――ドナルドとグーフィーがいた世界は元の世界ですよね? リアルなソラは元の世界ではどういう姿になるんでしょうか?
野村ドナルドとグーフィーは元の世界でソラの手掛かりを探しています。タイトル表示前のリアルな世界はすべてクァッドラトゥムの区分でソラもリアルな姿になりますが、元の世界に戻れればドナルドとグーフィーのようなシェーダーの見た目になります。
『キングダム ハーツIV』のバトルコンセプトは“スクラップ&ビルド”
――バトルシーンではキーブレードの変形やフリーランをしているところが見られ、『キングダム ハーツIII』の進化系のような印象を受けました。
野村そうですね。映像では敵がパンチをしてきた際にボタンアイコンが表示されるのが確認できると思うのですが、『キングダム ハーツII』のときにあったリアクションコマンドのようなものと思っていただければ。
――おお。ある状況下に一瞬表示されて、入力に成功すると特別なアクションが発動するコマンドですね。
野村黒丸の表示になっているのは単に対応機種を発表していないからです。
――ああ、なるほど。
野村『キングダム ハーツIII』の発売後に、リアクションコマンドの復活を望む声をけっこう目にしたので復活させました。
――左下コマンドウインドウの下にある“ビルド”という項目は?
野村今回のバトルのコンセプトは“スクラップ&ビルド”となっています。ビルドはそれを象徴するようなコマンドになっています。
――“スクラップ&ビルド”……。それはいったい?
野村まだ詳細はまだお話できませんが、破壊と再構成がカギになっています。続報をお待ちください。
『キングダム ハーツ ミッシングリンク』は自宅にいながら世界を巡れるアクション性の高いゲーム
――『キングダム ハーツIV』は“ロストマスター篇”になりますが、同じくイベントで発表されたスマホ向けの『キングダム ハーツ ミッシングリンク』は何篇に属する作品になるのでしょうか。
野村『キングダム ハーツ』はシリーズには、『キングダム ハーツIII』までの“ダークシーカー篇”、『キングダム ハーツIV』からの“ロストマスター篇”でもない、『キングダム ハーツχ(キー)』や『キングダム ハーツ ユニオン クロス』、『キングダム ハーツ ダークロード』の“χ(キー)”シリーズがありますが、『キングダム ハーツ ミッシングリンク』は、空白となっている期間を埋める作品であり、ブリッジ的な作品になります。
――『キングダム ハーツ ミッシングリンク』のトレーラーでは、ブレインの姿が確認できましたが、彼が主人公なのですか?
野村いえ、主人公はプレイヤー自身となります。『キングダム ハーツ アンチェインドχ』のように自分のアバターを作成するタイプになります。
――マルチプレイでも楽しめるアクション性の高いバトルを軸に、拡張現実技術を利用した、いわゆる位置情報ゲーム的要素が加わるという挑戦的な作品ですね。実際に出歩かなくても移動できるということですが、その場合はゲーム内でキャラを動かしながら移動する感じですか?
野村はい。Googleマップのストリートビューがあるじゃないですか。ストリートビューはタップして見たい場所へ進めていきますが、『キングダム ハーツ ミッシングリンク』もイメージ的にはそんな感じです。
――たとえば、沖縄にも歩きながらたどり着けると。
野村はい。ただ、遠くに行こうと思ったらそれなりの時間はかかると思います(笑)。ポイントを使うことで行きたい場所にすぐテレポすることもできます。
――ポイントを使いたくない場合は実際に出掛けてみる、と。そのへんはプレイヤーの判断ですね。
野村そうなります。
――フィールドが現実の世界とリンクしているということは、ディズニーのワールドなどは出てこないのですか?
野村いろいろ試しているところですが、タイミングによって部分的にディズニーのワールドをモチーフにした地形や雰囲気になったりします。開発初期はマップ全体にモチーフをスキンのように被せたりもしましたが、やり過ぎ感があったのでメリハリをつけてます。
――フィギュアのようなピースを集めるというのもおもしろそうですし、マルチのアクションバトルも楽しそうです。
野村本編ではやれないような尖ったことをやろうとしています。秋ごろを予定しているクローズドベータテストをぜひ楽しみにしていただきたいですね。
本稿でのインタビューはここまで。なお、週刊ファミ通5月12・19日合併号(4月28日発売号)では、本インタビューの拡大版を掲載予定です。そちらもお見逃しなく。